ジャンダルムで揺れた鎖の音

ジャンダルムで揺れた鎖の音

山と地質と街道とフィルムカメラのブログ 月1回更新

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エベレスト街道を振り返ったら食あたりとの戦いだった

久しぶりに実家に帰ったら2018年に行ったエベレスト街道の日記が出てきた。フィルム写真ともに振り返り旅の記憶を取り戻す。 2/15 成田→ムンバイ 小田急で人身事故。Kはタクシーで4万円使い成田へ。Kがレンズキャップをなくす。飛行機でブレードランナーとイ…

石炭の種類がワークウェアの色を決める

最近古着業界でモールスキンが流行っている。フランス版のジーンズのようなもので、ジーンズと同じく炭鉱労働者の服だ。どちらも非常に丈夫に作られていたり、色が青かったりと共通点が多い。しかしこの青はよく見るとけっこう違いがある。モールスキンは紫…

登山依存症

最近山でバテることが多くなってきた。原因は色々あるだろうが、一番は歳をとってきていることだろう。私は現在28歳だ。まだまだ若いのかもしれないが、20代前半の頃と比べると、運動量がさほど変わらないにも関わらず、明らかに体力が落ちている。体力が落…

熊野古道は古代の高速道路だった

熊野古道は世界で2例しかない「道」の世界遺産である。正式名称は「紀伊山地の霊場と参詣道」で、5本の参詣道や寺社が世界遺産として登録されている。1000年以上前から存在している道であり、日本人の登山者としていつか歩かなくてはと思っていた。1本道で…

岩と山【蛇紋岩編】

岩石の違いによる山の特徴を紹介するこのコーナー、第3回は蛇紋岩を紹介していく。 第1回:花崗岩編 gendarmes.hatenablog.com 第2回:玄武岩編 gendarmes.hatenablog.com 蛇紋岩について まずは蛇紋岩のことをことを知っておこう。蛇紋岩は黒〜緑の岩で、独…

YAMA 〜ストレス社会で闘うあなたに〜

現代はストレス社会と言われている。長時間労働、睡眠不足、人間関係、介護、育児と、しんどいことばかりだ。コロナ禍においてストレス社会は更に加速し、2020年度は自殺者数が11年ぶりに増加した。11年前はリーマンショックの頃である。コロナ禍との共通点…

人生で最も遭難に近づいたときの話

遭難。「災難に出あうこと。特に、登山や航海などで命を失うような危険にあうこと。」登山とは切り離すことができない問題であり、誰しも遭難する可能性がある。遭難の原因はたいてい複合的だが、遭難者の行動ミスや判断ミスが主因となっていることが多い。…

雪山でM42マウントを使うならBessaflex一択

こちらの記事で記したように、pentax spfは低温だとシャッター不調になることに悩まされていた。いろいろと検討を重ねたが解決の糸口は見つからず、新しいカメラの購入に踏み切ることにした。フィルムカメラで山に行く人すらそもそも少ないのに、M42マウント…

厳冬期の八ヶ岳を横断する

現在、八ヶ岳には車道が通っている。1966年に麦草峠を通るルートで東西に貫かれた。しかし、車道開通以前は麦草峠ではなく、夏沢峠が八ヶ岳越えのメインルートであった。南北に長い八ヶ岳は北八ヶ岳と南八ヶ岳に分けられるが、その境界が麦草峠ではなく夏沢…

天気図から読み解く天気の子

今更ながら「天気の子」という映画を観た。 新海誠監督が得意とする背景描写が凄まじくリアルだったのだが、それは天候表現も例外ではない。本記事では気象学的観点から、天気の巫女のチカラについて考察する。 ※本記事はネタバレを含みます。 天気の子 醍醐…

オイルドジャケットは日本に向いていない

服装は人間の文化のなかで最も気候に支配されている。熱帯でコートを着る人はいないし、寒帯ではタンクトップ一枚で過ごせない。地域に根付いた服装は、その地域の気候で最も過ごしやすい服装である。今回は気候的観点からオイルドジャケットについて考察す…

南部鉄器が欧州で売れたのは硬水のおかげ

日本の伝統工芸品が海外から注目を集めている。グッチやヴィトンと言ったハイブランドとコラボしているものもあるほどだ。なかでも早くから海外に輸出され、現在も高い人気を誇る伝統工芸品が南部鉄器である。 鉄瓶、岩手県水沢の及源鋳造で購入 南部鉄器と…

ほうとうは水不足から生まれた

土地には名物料理というものがある。人によっては旅行の目的となるくらいに多種多様で、多くの場合その土地でとれるものを使っている。そのため、料理はその土地の気候や地質を映す鏡となる。今回は山梨名物のほうとうを取り上げる。 ほうとう 山梨の気候 ま…

古道で南アルプスを横断する【伊奈街道】

日本人の生活は山とともにある。峠を越えて人が行き来し街が繋がる。現在の地図には載っていなかったとしても、名前が付いているような峠にはたいてい古道が通っている。それは日本最大級の山脈である南アルプスでも例外ではない。 ※文献調査結果はこちら ge…

山小屋の優しい幽霊

車から降りると湿った草木のにおいがした。6月終わりの空は雨こそ降っていないものの、どんよりとしてまだ梅雨が終わっていないことを声高に主張している。ここは栃木県足尾にある"かじか荘"の駐車場である。僕たち3人は日本百名山の一角である皇海山を登る…

アイラウイスキーが臭いのは水がまずいから

文化は地域性と密接な関連をもつ。特に食べ物や酒、工芸品などの"もの"は、その土地で手に入る材料で作らざるを得なかったため、地域の差が非常に出やすい。手に入る範囲の材料で、一番長持ちするものや、おいしいもの、経済的なものを追求した結果、言わば…

岩と山【玄武岩編】

岩石の違いによる山の特徴を紹介するこのコーナー、第2回は火山の島日本に特徴的な玄武岩を紹介していく。 第1回:花崗岩編 gendarmes.hatenablog.com 第3回:蛇紋岩編 gendarmes.hatenablog.com 玄武岩について まずは玄武岩のことをことを知っておこう。玄…

【実験】シャリバテしない身体を作れるか

「シャリバテは訓練で克服できる」 アドベンチャーレーサーの田中正人氏はあるインタビュー記事でこう言っていた(なんのメディアかは忘れてしまった)。目から鱗だった。エネルギー切れはどうにもならないから補給でなんとかするしかないと思っていた。ただ…

岩と山【花崗岩編】

岩石の違いによる山の特徴を紹介するこのコーナー、記念すべき第1回は日本の山になくてはならない花崗岩を紹介していく。 第2回:玄武岩編 gendarmes.hatenablog.com 第3回:蛇紋岩編 gendarmes.hatenablog.com 白地に黒い斑点が花崗岩の特徴 花崗岩について…

山は逃げる

コロナの自粛要請に伴い、登山界にも自粛の波が及んでいる。山岳4団体は「コロナウイルス収束までの登山自粛」を呼びかけ、富士山は今シーズンの閉鎖が決まった。今、世の登山者は、登山と言えど人間社会の延長でしかないことを思い知らされているだろう。山…

無料の山岳天気予報がない理由

※この記事は2020年5月時点の情報です。 山の楽しさは天気次第である。景色がよく気持ちのいい森林限界を超えた尾根道も、雨が降ればなにも見えずびちょびちょになり修行と化す。私は極度の雨男だ。大学時代に所属していた登山サークルで、私が参加した山行は…

アイゼンの歯を復活させる

尖ったものは丸くなる。自然の理である。包丁はどんどん切れなくなっていくし、息子に厳しかったじじいも孫には甘くなる。そして、私のアイゼンも丸くなっていた。 氷の上でも 私のアイゼンはブラックダイヤモンドのバンド式で、12本歯のステンレス製だ。買…

甲府以降がつらかったのは江戸幕府のせい【徒歩甲州街道④】

③はこちら 5日目 ホテルから外に出ると一面真っ白だった。昨晩は暗くてよくわからなかったが、思いのほか雪が深い。雪の積もった歩道をザクザク進んでいく。車の通りが多すぎて除雪されている車道を歩けないのだ。急いで旧道へと逃げ込み乾いた地面を歩く。1…

ラブホは徒歩旅行に向いている【徒歩甲州街道③】

②はこちら 4日目 7時に起きてもまだ外は大雨だった。スーパー銭湯の朝食バイキングで時間を潰すが一向にやむ気配がなく、8:45ごろに大雨のなか思い切って出発した。歩き始めて数分で靴が水没し、激しく後悔した。濡れちまったもんはしょうがない。どうせ濡れ…

がんばらないことが長続きの秘訣【徒歩甲州街道②】

①はこちら 3日目 ルートインの朝食バイキングに合わせて6時半に起床した。ビジネスホテルの朝食バイキングというものはなぜこんなに楽しいのだろう。おいしすぎるよ、いももち。 上野原の街を出ると国道20号線と甲州街道旧道は大きく離れる。国道は桂川沿い…

ケツ擦れは人類が進化途中の証【徒歩甲州街道①】

東海道を歩き切ってから1年経とうとしていた。じわじわと旅への渇望が高まってくる。甲州街道編、スタート。 東海道編はこちら(準備編、実践編①、実践編②) https://www.jinriki.info/kaidolist/koshukaido/ 1日目 仕事を終え一度家に帰った後、20:30頃日本…

地質学的観点からみるディズニー

コロナウイルスが猛威を振るっている。とうとう夢の国ディズニーランドまで閉園してしまった。夢の国もウイルスには勝てなかったようだ。ディズニーが夢の国と言われる所以は世界観の作り込みにあると言われているが、ディズニーの作り込みは地質にまで及ん…

山で飲むコーヒーの淹れ方について比較検討する

山に登る人にはなぜかコーヒー好きが多い。漫画「岳」の島崎三歩もいつもコーヒーを飲んでいる。寒い山であったまるためとか、空気が薄くてぼーっとするから頭をシャキッとさせるためとか、色々理由はあるだろう。私も例に漏れずいつのまにかコーヒーが好き…

山でフィルムカメラを使う理由

前の記事で触れたが、私は山でフィルムカメラを使って写真を撮っている。学生時代に出会った山仲間に影響されて始め、今ではどこへ登るにもフィルムカメラが手放せない。使い始めてたった数年の私がこんな記事を書くのは忍びないけれど、なぜ使うのかを考え…

ゴム引き布幕シャッターの耐寒性能実験

私は山でフィルムカメラを使っている。動力に電池が必要ない等の理由から基本的には低温に強いのだが、厳冬期の雪山で超低温になるとシャッターがうまく動かず半分黒くなった非常に悲しい写真が現像されることがたびたびあった。このような被害者を二度と出…