ジャンダルムで揺れた鎖の音

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山と地質と街道とフィルムカメラのブログ 月1回更新

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ゴム引き布幕シャッターの耐寒性能実験

私は山でフィルムカメラを使っている。動力に電池が必要ない等の理由から基本的には低温に強いのだが、厳冬期の雪山で超低温になるとシャッターがうまく動かず半分黒くなった非常に悲しい写真が現像されることがたびたびあった。このような被害者を二度と出さないために発生条件を実験する。

 

※非常にマニアックな記事なので興味のない方は早急に戻るボタンを押してください。

 

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悲しみのチラ見せ、2月の赤岳にて

私の使っているカメラはpentax spfである。1973年に発売されたカメラで、ヤフオクで入手した。シャッターはフォーカルプレーンシャッターだが、金属幕ではなくゴム引き布幕を使っているという点で現在のカメラと異なる。カタログスペックでの耐温性能は+50~-20℃で、現在のカメラよりも耐寒性能は高いことになっている(現在のリチウムイオンバッテリーを使っているカメラはたいてい0℃まで、アウトドア向けのカメラが-10℃までのことが多い)。そのため現在でも探検家や登山家はいまだにフィルムカメラを愛用している人も多い。でもその人たちが使っているカメラは知る限りでは金属幕のシャッターだ。pentax spfのシャッターが不調になる原因はそのへんにありそうである。まあゴムだから冷えると硬化するよね。

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pentax spf、夏のユーシン渓谷にて

実験方法は、カメラを冷やしてから裏蓋を開けた状態でシャッターを切ってみるというシンプルなものである。とりあえず冷凍庫に投入した。我が家の冷凍庫は出力が中だと-18℃で、弱や強にすると3℃くらい温度が変わるらしいので、多少の調整が可能だ。ちなみに低温から急に室温に持ってくるとカメラは結露し、放置するとカビが生えたりして不調の原因となるため、防湿庫等の乾燥可能な設備が整っている場合のみ実行するようにしよう(乾燥できたとしても、急激な温度変化はカメラにはあんまりよくないけど)。

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カメラin冷凍庫

 まずは中(-18℃)で投入、一応温度計も入れてみたが、我が家の温度計は0℃以下の目盛がないことにあとから気づいた。冷蔵庫の説明書を信じることにしよう。冷凍庫に入れて30分くらい待つと、キンキンに冷えたカメラができあがった。カメラが温まる前に急いでシャッターを確かめる。あれ、ぜんぜん変わらない。フィルムにまったく感光していないエリアができるくらいだから、目視でも分かるはずなんだけど。ほかのシャッタースピードでも試してみるが、特に異常はなかった。どうやら-18℃では足りないようだ。冷凍庫の出力を強(-21℃)にしてさらに30分待つ。あれ、またもやぜんぜん変わらない。持っているのがつらいほどキンキンに冷えているのに、普通に動いている。念のためさらに2時間ほど入れっぱなしにしてみたが、変わらなかった。

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とりあえずマイナスにはなっている

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冷凍庫から出したてのカメラ

ということは信じたくもないが、カメラが不調になった山では気温が少なくとも-21℃よりも低かったらしい。今までで不調になったときはいずれも寒気の流入があり、死ぬほど寒かった記憶がある。-21℃以下ということはほんとに死にそうだったのかもしれない。

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一番写らなかったとき

我が家ではこれ以上温度を下げる手段がないので実験はこれまで。暫定的な結果としては、-20℃くらいまでは普通に動く。これ以上は山に温度計を持っていくしかないのだろうか。アイデアもしくは-21℃以下になる冷凍庫募集中。