ある日、仕事の知り合いから期限切れフィルムを大量にもらった。引っ越しをしたときに冷蔵庫の奥から出てきたらしい。フィルムの価格が高すぎるご時世なので、非常にありがたい。とはいえ期限切れフィルムは癖が強いものも多いし、個体差も大きく、下手したら失敗する。過去の記事でも扱ったが、血反吐を吐きながら山に登ったときの写真が消えると、その交通費やかけた時間も失われるため、フィルム自体の値段の数倍の損失が発生する。冬のアルプスとかのような貴重な景色を撮影する際に、ギャンブル的撮影をするわけにはいかない。そのため、これを機に手ごろな山でいろいろ比較してみることにした。
今回紹介するフィルムは以下のとおりである。
・業務用400【富士フイルム】
・PRO400H 【富士フイルム】
・Venus800【富士フイルム】
・Gold100 【Kodak】
・CENTURIA400 【KONICA MINOLTA】
※写真のキャプションは使用したレンズを示している。
※一般にフィルムの感度は10年で一段程度落ちるといわれている。今回はCENTURIA400を除きその法則に従っている。
※期限切れフィルムの注意点は、世の中にいろいろな記事があるので割愛する。
※期限切れフィルムは保管状況による個体差が大きく、必ずしも同じような写りになるとは限らない。
業務用400【富士フイルム】
※使用期限は約20年前、ISO100として運用
かなりまともに写っている。全体的に彩度やコントラストはやや落ちているが、まあ普通に使える範囲である。期限切れフィルム感があまりない。
一部のフィルムで上端が波打つような模様が入ってしまっており(ビネガーシンドローム?)、そこに空が写っていると目立ってしまっていた(写真4枚目)。
PRO400H 【富士フイルム】
※使用期限は約20年前、ISO100として運用
彩度が低く青みが強い。PRO400Hが持っているもともとの特徴がさらに強くなってしまった感じだ。ややオーバー気味に写ってしまった写真が多かったっため、ISO200としての運用がちょうどよかったかもしれない。粒子は粗い。
Venus800【富士フイルム】
※使用期限は約20年前、ISO200として運用
割とまともに写っている。全体的に彩度やコントラストは少し落ち、ややマゼンダの色味が強くなっている。高感度フィルムだったこともあり、粒子はかなり粗い。
Gold100 【Kodak】
※使用期限は約20年前、ISO25として運用
マゼンダが強い。彩度やコントラストもかなり落ちている。iso25としての運用は制約が大きく、日があたっていないと撮影不能となる。期限切れフィルムらしい写りともいえる。
CENTURIA400 【KONICA MINOLTA】
※使用期限は約20年前だがISO400として運用
マゼンダが超強い。ミノルタのフィルムはもともとマゼンダが強めだが、さらに際立ってしまっている。彩度やコントラストもかなり落ちている。ノイズも多い。ISO400としてそのまま使ってしまったため、暗めに写ってしまっているが、2段落としてISO100としての運用がちょうどよさそうである。期限切れフィルムらしい写りともいえる。
フジのフィルムは劣化にめちゃくちゃ強いことがわかった。特に業務用400は現行品との区別がつかないレベルだ。最近はフィルムカメラの店で期限切れフィルムが売っていることがたびたびあるが、業務用400は「買い」である。逆にいえば、期限切れフィルムっぽいランダムな写りは望めなそうだ。期限切れフィルムっぽさを楽しみたい人は、富士フイルムでないものを買うとよい。
フジのフィルムが劣化に強い原因は不明だが、高温多湿の日本の気候も関係しているかもしれない。国産のため、日本の気候に最適化している説だ。砂漠や寒冷地に20年おいておいたら、フジよりもkodakのほうが劣化していない可能性がある。
一方で、まだまだ比較するフィルムの種類が足りていないため、これからも事例を増やしていこうと思う。期限切れフィルムの作例記事は、まだ世の中にあまりない。実家とかに古いフィルムが転がっていたら、ぜひ使ってみて作例を発信してほしい。私の知り合いで発信が面倒な人は、私に託してもらえるとありがたい。とりあえず山で実験して、成果報告まではしますので。あとは砂漠で20年間過ごしたフジのフィルムも募集中。