ジャンダルムで揺れた鎖の音

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山と地質と街道とフィルムカメラのブログ 月1回更新

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CONTAX T3のスプールの爪が折れても使い続ける方法

2022年4月にCONTAX T3を買った。決して安いカメラではなく、だいたい給料1か月分が吹っ飛んだ。4月の私は大赤字である。写りはまあ素晴らしく楽しい日々を送っていたが、7月に大トラブルが発生した。新しいフィルムを装填しても空転するばかりで、フィルムを巻き上げることができなくなったのだ。修理に出そうと思って買った店に持っていったが、CONTAX製品は修理工場が1か所しか機能しておらず半年は返ってこないとのこと。そもそも2022年の秋に友人の結婚式がいっぱいあったりしてそのために買ったカメラでもあるのに、半年預けるのは機会損失がでかすぎる。そして部品もなくなってきているため修理に出したところで半分以上のカメラは対応不可となるとのこと。ほかの修理屋にも数店に電話をかけたが、受け付けてくれるところがみつからない。買った店で勧められた修理工場を同じように紹介されるのみであった。ネットで調べても解決策は出てこない。3日ほど絶望の淵に佇む。しかし給料1か月分をこんなにも簡単に諦めるわけにはいかない。自分でなんとかしよう。結論から言うとなんとかなった。

※この記事の対応によりなんらかの故障が発生しても一切責任を負いかねます。自己責任で。

CONTAX T3
原因

まずは原因を特定する。CONTAX T3は裏蓋をしめたら自動でフィルムが巻き上げられる。今回の故障は、裏蓋をしめるとモーターが回る音がするものの、フィルムが巻きあげられていないものである。よってスプール(フィルムが巻かれる軸)にフィルムが引っかかっていないと推定した。そこで注意深くスプールを観察すると、あることに気づいた。スプールの爪が欠けている。爪の根元は残っていたためパッと見て分かりにくく気づかなかったが、先端部がなくなっていた。こんなところぶつけるようなこともないし、おそらく経年劣化だろう。ちなみにCONTAX T3の後期型は爪が2つになったらしい(私の買った個体は前期型だとこのとき判明した)。マイナーチェンジはここだけで、当時からそれなりに故障しやすい箇所だったのかもしれない。

欠けた爪
解決策

原因がわかったところで解決策の検討に移る。スプールの爪が欠けたことによるフィルムの空転を解決するには、1.爪を復活させる、2.なんらかの方法でスプールにフィルムを固定する、のアプローチが考えられる。まずは「1.爪を復活させる」を試みた。

うまくいかなかった。欠けた爪は見つからなかったため、接着剤でスプールに出っ張りをつけ疑似的な爪にしようとしたが、ダメだった。接着剤は意外とすぐにスプールからとれてしまうし、残ったとしてもうまくフィルムに引っかからなった。穴をあけてネジでもつければなんとかなるかもしれないが、スプールの厚みが分からないため余りにもリスキーだ。自分の作業でとどめを刺してしまったらもう立ち直れないだろうし。

ということで残る解決方法は「2.なんらかの方法でスプールにフィルムを固定する」のみとなった。これがうまくいったわけだが、固定の方法はテープで止めるという至ってシンプルなものである。着想を得たきっかけは、フィルムの現像を失敗した際にフィルムがセロテープで固定されていたのを思い出したことだ。さすがにセロテープだと粘着力が強すぎる気がしたので、とりあえずマスキングテープで固定したらうまく巻いてくれた。とりあえずこれで課題は解決となる。あとはこの方法で不調がでないかを確認する。

マスキングテープで固定
懸念点

このやり方で写りやカメラに不調がでないか確認する。

まずはうまく写るのかという点だ。これに関しては撮ってみて現像して問題がみられなければよい。ということでフィルムを3本撮ってみたが特に問題は起こらなかった。スプールへの固定方法が変わるため、固定箇所に近い1枚目や2枚目になんらかの歪みがでたりすることが懸念されたが杞憂であった。

テープで固定して1枚目の写真、特に歪みは認められない

次に確認すべきは撮り終わった際にフィルムがちぎれないかという点だ。CONTAX T3は撮り終わったあとに自動でフィルムが巻かれる。本来は爪で引っかかっているだけなので自動的にスプールから外れるが、テープだと末端で巻き取る力がそのままフィルムに伝わりちぎれる可能性がある。ちぎれるまでいかなくとも機械になんらかの負荷はかかってしまうだろう。この負荷を低減するために「フィルム先端をパトローネの外に残す」というカスタム機能を使用した。この機能の設定方法を説明書から抜粋する。

ただしこのやり方は完璧な対策とはなっていなそうだ。フィルムの長さは種類によってまちまちであるため、長さで管理してフィルムの先端を残すという操作はできない。よって、フィルム固定軸が回っているのにスプールが回っていないという状態になったら、フィルム固定軸の回転を止めるという処理が行われていると推定される。この処理は確実にラグが生じるため、一瞬ではあるがフィルムやスプールに負荷がかかると考えられる。そのため「スプールにテープで止める」という方法で使い続けた場合なんらかの不具合が生じる可能性が否定できない。

ということで、使う機会が減ったらいったん修理に出してみようと思う。修理できないかもしれないが、そのときはしょうがない。使えないよりマシである。だって給料1か月分だもの。