ジャンダルムで揺れた鎖の音

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山と地質と街道とフィルムカメラのブログ 月1回更新

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山で使うフィルム撮り比べ【35mmカラーポジ編】

ポジフィルムは撮影が難しいし価格が高い。このイメージを多くの人が持っているせいか、ポジフィルムの使っている人の数はネガフィルムを使っている人に比べて圧倒的に少ない。私の周りの体感では10分の1未満である。そのためネットにあげられている作例も数が非常に少ない。私はフィルムを山で使いたいが、もちろん山の作例は非常に数が少ない。よってここでは山で現行の各ポジフィルムを使ったらどんな感じになるのか作例を載せていく。結局は好みであるためこれが山に向いていると断言することはできない。未熟な写真ではあるが、山で使うフィルムを検討する材料となれば嬉しい。試していないフィルムもあり現行品を網羅しているわけではないので悪しからず。

 

今回紹介するフィルムは以下のとおりである。

・PROVIA100F【富士フイルム

・VELVIA100 【富士フイルム

・EKTACHROME E100【Kodak

 

これらを比較したあと、なぜポジフィルムがいまいち流行らないのかを考察する。

では早速紹介していこう。

※この記事の情報は2022年5月時点の情報です。

※写真のキャプションは使用したレンズを示しています。

※ポジフィルムの説明は省きます!

そのまま鑑賞できるのはポジフィルムの大きな魅力のひとつ

 

PROVIA100F【富士フイルム

定番ポジフィルム。落ち着いた発色でやや青みがかる。ポジフィルムのなかではコントラストやシャープネスが低めの印象(もちろんネガよりは高いけれど)。値段は2000円程度でポジフィルムのなかでは標準的。

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm
 

 

VELVIA100【富士フイルム

彩度が非常に高い。コントラストやシャープネスも高い。感度が50のものもあり、晴れた山ならば50もほうが使いやすく画質もいいかと思う。値段はPROVIAと同じく2000円程度でポジフィルムのなかでは標準的。

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm
 

 

EKTACHROME E100【Kodak

2018年にまさかの復活を遂げたフィルム。彩度が高くやや黄色っぽくなる。ポジフィルムのなかではラチチュードが広い印象(もちろんネガよりは狭い)。価格は4000円程度と非常に高い。値上がりが続いている。

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm

Carl Zeiss Jena flektogon 35mm
 

 

なぜポジフィルムはいまいち流行らないのか

ポジフィルムはネガフィルムとはまた違った美しい写真が撮れる。それは間違いないかと思う。にも関わらず近年のフィルム写真ブームに伴うネガフィルムの伸び(下げ止まり?)と比べて、ポジフィルムはいまいち伸びていない。懇意にしている現像屋さんによると、ネガフィルムの現像件数は若い人を中心にかなり増えてきているが、ポジフィルムを持ってくる人は相変わらずほとんどいないとのこと(ポジフィルムはどうせ外注になってしまうからかもしれないが)。なぜか。ここで改めてポジフィルム全般の一般的に言われるメリットデメリットを挙げて考えてみる。

 

メリット

コントラストが大きい

・発色がいい

・画質(粒状性)がいい

・現像したフィルムをそのまま鑑賞できる

 

デメリット

・ラチチュードが狭い

・フィルムの価格が高い

・現像に時間がかかる

・現像時に補正が効かない

 

ここで注意すべきは、あくまでもネガフィルムと比較したメリットデメリットが挙げられているという点だ。現在はさらにデジタルカメラと競わなければならない。ここであることに気づく、ポジフィルムのメリットはほとんどデジタルカメラのメリットと被っているんじゃないかと。

もちろんデジタルカメラがすべての面でポジフィルムの上位互換というわけではない。現像したフィルムをそのまま鑑賞したときの感動はデジタルカメラでは決して味わえないものだし、階調表現の豊かさはポジフィルムに分があると思っている。といっても写真自体にそこまで大きな差がないことは事実で、私の貧弱な目では正直言って見分けることができる自信がない。近年のデジタルカメラは画質の進化が著しいこともあり、めちゃくちゃ叩かれそうな表現を敢えてするなら、ポジフィルムで撮った写真は画質の悪いデジカメで撮った写真に見えてしまうことが多々あるのだ。

撮影された成果に大きな差がないとすると、今度はデメリットが目に付くようになってくる。ランニングコストがかからず撮った画像をその場で確認できるデジタルカメラは、当たり前だがフィルムに比べて圧倒的に利便性が高い。これがポジフィルム伸び悩みの原因ではないか。

デジタルカメラが出てくる前は、ポジフィルムとネガフィルムは完全に住みわけができていたのだろう。プリントを前提とした商業写真や投影を前提とした写真はポジを使っていたというし、ポジフィルムの機能的な優位性は代わりの効かないものだったと推定される。すなわち実用的だったのだ。ところがこの実用性がなくなると、残るのはロマンのみである。このような実用性からロマンへの価値の転換は様々な分野で見受けられる。例えば革靴のレザーソールとかテレマークスキーなどだ。昔は第一線で活躍していたが、技術の進化によって現在は実用性に欠けてしまっている。でもこれらのロマン装備はやっぱりかっこいいのだ。理屈じゃないので宗教的になってしまうのは重々承知している。そのせいか原理主義的な人が多いのも事実で、冒頭で述べたようなポジフィルムに対する難しいイメージは原理主義過激派たちによるものだろう。しかし今は自動露出が発達しているためそこまで難しいものではない。ひとまずポジフィルムに体験入信してみてはいかがでしょうか。

レザーソールに半張り、実用性とロマンで揺れ動く